2025年秋、継青堂は大手インフラ企業に対し、3日間にわたる人権研修プログラムを提供しました。本研修は、企業活動における人権リスクの理解と対応力の向上を目的とし、実務者を対象に設計されたものです。
人権DDの「現場の力」を高める研修
近年、国際的な人権基準への対応が企業に求められる中、サプライチェーン全体における人権尊重の実践が急務となっています。今回の研修は、企業の人権デューディリジェンス体制の強化を支援するため、実務者向けのプログラムを実施しました。
今回のクライアントはプライム上場の大企業であり、グループ全体での人権リスク対策が重要視される中、各グループ会社から人権リスクアセスメントの実務を担う担当者が参加しました。研修には約80名が参加し、グループ全体での一貫性ある対応を目指す実践的な内容を展開しました。
実務者研修の内容
今回の実務者向け研修では、「ビジネスと人権」に関する基礎的な理解から、企業が果たすべき人権尊重責任、そして人権リスクの特定評価まで、体系的に学ぶ構成としました。研修は3部構成で行い、それぞれ次のような内容で展開しました。
研修内容の詳細
第1部:入門講座
- ビジネスと人権の概要
- 人権の歴史的背景と国際的な枠組み(国連指導原則など)
- インフラ業界における人権課題の具体例(開発、気候変動、児童労働など)
- 人権リスク、人権DD、グリーバンスなどの用語解説
第2部:企業の人権を尊重する責任
- 自社の人権方針を紐解いて解説
- 人権デューディリジェンスの4ステップ(方針策定、リスク評価、対応、モニタリング)
- 他社事例の紹介を通じて、業界ごとの取り組みの違いや工夫を学習
第3部:人権リスクの特定評価+ケーススタディ
- ビジネスと人権に関する指導原則の詳説
- OECDガイダンスに基づく7つのステップの習得
- 自社の人権リスクアセスメント・シートの記入方法
- 架空のプロジェクトを題材にしたケーススタディ
特に、最終日に実施されたケーススタディでは、参加者が自社の事業活動に潜む人権リスクを洗い出し、優先順位をつけて対応策を検討する実践的なワークを行いました。この演習は「理解が深まった」「自分事として考えるきっかけになった」と高く評価されました。
受講者満足度は94.5%を達成
今回の実務者向け研修は、満足度94.5%という高い評価を得ており、参加者からは、時事問題や業界事例を交えた説明が理解を深める助けとなったこと、フレームワークの活用によって新たな人権リスクの発見につながったこと、そしてケーススタディを通じて実務への応用がしやすくなった点などが好意的に受け止められました。一方で、講義形式の長時間研修には負担を感じる声もありましたが、業界用語の丁寧な解説や人権デューディリジェンスの重要性に対する認識が高まったことで、実務担当者への理解浸透の必要性を再確認する機会となりました。
受講者の声
最近の時事(フジTV問題など)を例に出していただいたことで、身近に感じやすかった
インフラ業界における人権問題の事例紹介が分かりやすく、勉強になった
人権リスクを抽出するフレームワークを作成することで、新たなリスクの発見につながった
長時間の講義はやや負担だったが、内容は重要で理解が深まった
ケーススタディでステークホルダーの視点を確認でき、実務に落とし込みやすいと感じた
人権分野の専門用語を丁寧に解説してくれた点が良かった