ビジネスと人権を”自分ごと”に変える第一歩──大手機械メーカーでの新任者研修

「人権」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。国際条約、社会課題、あるいはニュースで見かける遠い世界の話かもしれません。しかし、企業活動の中で人権が果たす役割は、今や“CSR”や“コンプライアンス”の枠を超え、経営や事業そのものに深く関わるテーマとなっています。

現場で求められる人権尊重

あるプライム市場上場の大手機械メーカーでは、サプライチェーン全体における人権尊重の重要性が高まる中、新任担当者が人権課題に対して適切な理解と対応力を持つことが急務となっていました。特に、国際的な人権基準や国内外の規制動向が複雑化する中で、現場での判断や対応に迷いが生じるケースも少なくありません。

そこで継青堂は、同社のDE&I主管部門と連携し、新任担当者向けの「ビジネスと人権」研修を企画・実施しました。研修は2回に分けて行われ、合計120分という限られた時間の中で、参加者が人権を「自分ごと」として捉え、実務に活かせる視点を養うことを目的としました。

“自分ごと”としての人権理解を促す

ビジネスと人権の新任担当者は、他業務との兼務が常であり、日々多忙を極めています。そのため、「なぜ人権に取り組む必要があるのか」という根本的な問いに対して、十分に納得できていないケースも想定されました。そこで本研修では、企業が人権尊重に取り組む意義を、国内外の動向や具体的な事例を交えながら、丁寧にひも解くことを、研修プログラムに組み込みました。単なる制度対応ではなく、企業価値や信頼に直結するテーマであることを伝えることで、参加者が人権を“自分ごと”として捉える第一歩を踏み出せるよう設計しました。

研修の冒頭では、「人権とは何か」を企業視点で捉え直すことから始まりました。単なる抽象的な概念ではなく、企業活動の中で具体的にどのような権利が関係し、どのような責任が求められるのかを、国際基準や国内法制度を踏まえて解説。さらに、企業が人権に与える影響をどう評価し、どう対応すべきかという「人権デューデリジェンス」の考え方を、実例を交えながら紹介しました。

特に印象的だったのは、ライツホルダー(ビジネスによって負の影響を受ける人びと)との「有意義な協議」の重要性についてのセッションです。企業が人権リスクを正しく把握し、対応するためには、影響を受ける人々との対話が不可欠であることを、具体的な事例を通じて学びました。

人権尊重を経営戦略に

継青堂では、こうした研修を単なる知識提供にとどめることなく、企業の人権対応を経営戦略の一部として位置づける支援を行っています。方針策定からデューデリジェンスの設計、ステークホルダーとの対話支援まで、企業の状況に応じた柔軟なサポートを提供しています。

この研修は、企業が人権尊重を“当たり前のこと”として実践するための第一歩となりました。そして何より、参加者一人ひとりが「人権は自分の仕事に関係がある」と気づいたことこそが、最も大きな成果だったといえるでしょう。

今回の研修プログラム内容

  1. 「人権」を企業視点で捉える
  2. 日本企業を取り巻く国内外の動向
  3. 企業の人権を尊重する責任とは
  4. 企業にとって「人権リスク」とは
  5. 尊重すべきはだれの・どの権利か
  6. ステークホルダーとの有意義な協議

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